「アーバスの写真の説得力はその引き裂くような被写体と、落ち着いた、ありのままを注視する態度との間の対照からきている。
この注意力の質-写真家が払う注意力と被写体が撮影される行為に対して払う注意力-
がアーバスの真直ぐ見すえて思いに耽るポートレート群の道徳劇をつくり出している。写真家は変り者や宿無しを探して盗み撮りするどころか、
彼らを知り、自信を取り戻させなければならなかった。そうやってみなは、ヴィクトリア時代のどこかの名士がスタジオに坐ってジュリア・
マーガレット・キャメロンにポートレートを撮ってもらうといった具合に彼女のために落ち着いたり緊張したりしてポーズをとったのである。」
(「写真論」 スーザン・ソンタグ 近藤耕人訳 晶文社)