2007/02/05

アーレントがとらえる自由

ではアーレントは「自由」というものをどのようにとらえているか。彼女は「自由」(freedom)と「解放」
(liberation)を区別する。「政治的自由」(political freedom)と「市民的自由」(civil
liberty)や「市民的権利」(civil right)は混同されてはならないとする。
市民的自由とは市民の私的生活を守るものであり、私的な事項に属するが、政治的自由は公共の事柄に参加する自由こそを意味する。
さらに言えば、アーレントの考える「自由」は、何か新しい事柄を産み出す能力でもある。

「政治的自由とは何かを意思する能力ではなく、私が何かをなしうるという能力なのである。」


つまり自発性と、何かを産み出す能力がアーレントの「自由」の内容である。そしてさらに重要なのは、従来の共和主義者
(自由主義的個人主義を批判し、公的意味において自由を理解する人々)でさえ、
自由をすでに設定された課題に対して集団的決定をなすことと考えるのに対し、設定された選択肢からどれかをえらぶ能力ではなく、
仲間とともに全く新しい可能性を探究する能力こそがアーレントの考える「自由」の内容である。彼女は人間の自由の中に、
奇跡を産み出すような特質を見、予測可能な出来事の連鎖を断ち切り、全く予測できない事柄をなそうとする能力の存在を強調する。
こうした集団的で、ダイナミックな活動のうちに見られるような「自由」のヴィジョンは、アメリカの開拓者精神を彷彿とさせる。


(「ハンナ・アーレント入門」 杉浦敏子 藤原敏子)