2007/02/12

アーレントとルソーの異なる点

「アーレントがルソーと異なるのは、人民が結合するのは、共通の意志によってではなく、共通の世界を共有することによって、
とする点においてである。自由と平等の観点を維持しながら、人々が一緒に暮らすために、同じように存在し、
同じように思考することは必要でない。

市民が結びつくのは、彼らが同じ公的空間に住み、関心を共有することによって、また方を認め、
意見が対立するときは調停するという取決めによってであって、単一の意見の形成によってではない。


「すべての意見が同じになったところでは、意見の形成は不可能になる。そして意見を全員一致のものにつくり変える「強い人間」
が待ち受けられるようになったとき、すべての意見は死ぬ。」


「全員一致の意見」といったものは、アーレントにとってはそもそも危険の兆候であり、人々が考えることを止めたサインである。
「大衆の全員一致は、同意の結果ではなく、狂信とヒステリーの表現である。」
ここに全体主義への転落という民主主義の陥穽が待ち受けているのである。」


(「ハンナ・アーレント入門」 杉浦敏子 藤原出版)


引用は、ハンナ・アーレント 「革命について」 志水速雄訳 ちくま学芸文庫