どうして私がいつも戸惑っているのか、その理由を母が話してくれたことがある。私に木の要素が欠けているからだ、と母はいった。生まれつき木の要素に欠けているため、大勢の意見に左右されるのだ、と。自分にもその傾向があるから、よくわかるのよ、と母は言った。
「女の子は、若木に似ているの。ぴんと背中を伸ばして、隣に立っている母親の言うことを聞かなければいけないの。強く真っ直ぐに育つには、それしかないのよ。でも、他の人の言葉を聞こうとして身をかがめると、曲がった弱い木になってしまうの。最初の強い風で地べたになぎ倒されてしまうでしょうよ。そうなったら、ところかまわず伸びる雑草みたいに地べたを這い、誰かに引き抜かれて捨てられてしまうわ」
(「ジョイ・ラック・クラブ」 エィミ・タン 小沢瑞穂訳)