2007/05/20

よい政治を作るのは思いやりや道徳ではないというのが共和主義的な考え方

共和国を作るのはまず何よりも共和主義者であり、彼らの意思である。デモクラシーは人々が相対的に無関心でも、形式主義的に、
すなわち法的文書の冷たい客観性にしたがって機能する。選挙で50パーセントの棄権者が出ると、共和国はその内実を失ってしまうが、
デモクラシーにはそういうことがない。法律家の政府は共和主義的なものではありえない。それは、
立法者である人民が主権を奪われるという理由だけからではない。法律家の政府のもとでは、
ひとりひとりの市民が法の命じるところを心の底から欲する必要がなくなってしまうからである。


それゆえ、このことは、デモクラシーが、私的なものを混同し、
そしてまた個人の優れた資質と市民としてはたすべき義務を峻別することがないがゆえに道徳を大切にするということと矛盾しない。
デモクラシーにおいては、慈悲が正義と取り違えられることがよくある。ピエール師は人の進むべき道を照らす光であり、赤十字と
「心のレストラン」が「社会問題」に対する満足のゆく解決だと見なされてしまうのである。私的なものと公的なものをはっきりと区別する -
 その理由は、宗教的世界と世俗的世界の区別と同じだ - 共和国は、公人をその私生活によって判断しようとはしない
(アメリカはそういう国だ)。共和国が大切にするのは市民精神である。よい政治を作るのは思いやりや道徳ではないというのが、
共和主義的な考え方なのである。


(「あなたはデモクラットか、それとも共和主義者か」 レジス・ドゥプレ 水林章訳)


(補足1:ここでいうデモクラシーとは新自由主義的な意味合いと受け取って欲しい。当然に共和主義は民主的である)

(補足2:ピエール師とは訳注によれば、
1912年生まれのカトリック司祭でホームレスなど社会的弱者を救済するために献身的な活動を展開している方)

(補足3:「心のレストラン」とは、コミック俳優コリュッシュが1985年に創設したホームレスのための無料レストラン)