「アーノルドが死んだのは自分のせいかもしれないと思うのは、それほど突飛なことではない。
おそらく彼は私の夫になるべき運命だったのだ。というのは、未だに私はこう考えているから。
この混乱にみちた世の中に、どうしてこんなに多くの偶然や類似や正反対のことがあふれているんだろう、と。なぜアーノルドは、
私にだけ輪ゴムで狙ったのか? 彼を憎み始めたのと同じ年に、なぜ彼は麻疹にかかったの? それに、
どうして私はまずアーノルドのことを思い浮かべ - 母が私のお茶を覗いたときに - 彼をあれほど憎むようになったんだろう? 憎しみは、
むくわれない愛の裏返しにすぎないのでは?
すべては妄想だと片づけられるようになってからでさえ、心のどこかで人は自分に釣り合ったものしか手に入れられないのだと感じている。
私はアーノルドを手に入れなかった。ハロルドを手に入れた。」
(「ジョイ・ラック・クラブ」 エミィ・タン 小沢瑞穂訳)