2007/01/25

江藤淳の死

江藤淳は、なかなか「死」に際がすっきりした人だなと思いました。遺書みたいなものがありましたが、あれはいい文章だと思っています。
しかし、大江健三郎(1935~)や老人介護の専門化の三好晴樹(1950~)は、「そんなに潔いわけでもないし、
ああいう自殺は決してよくない。江藤淳と同じように脳梗塞でリハビリで苦労している人はどう思うだろうか」と否定的に捉えています。でも、
僕は太宰治の自殺以降、思い切った決断力のある文章だと思っています。江藤淳も格別書くものがなくなったとか、
行き詰まったということでもないし、奥さんに先立たれて時間のずれはあるけど、一種の心中みたいなものだという理解の仕方もあるでしょう。
ただ、僕は奥さんのことを言うなら、看病でものすごく疲れてしまった。さらに年齢から起こる前立腺炎の苦しみや脳梗塞になって、
気持ちを立て直すうちに老いてしまった。そういうことが自殺の原因ではないかと思っています。


(「老いの流儀」 吉本隆明 NHK出版)