「ハロルドが嫌がるとわかっていても、私は泣き出してしまう。私が泣くと、彼はいつも不機嫌になって怒る。
泣くのは狡い手口だと思っているのだ。だが、この喧嘩の焦点が見えなくなっている私には泣くことしかできない。
私はハロルドに食べさせてもらいたいのか? 分担金を半分より少なくしてほしいと頼みたいのか?
すべての生活費を計算するのをやめるべきだと本気で思っているのか? そうしたとしても、頭で計算し続けることになるんじゃないか?
結局ハロルドが大半を負担するのでは? そうなったら、私は対等意識がもてなくなって今よりもっと惨めになるのでは?
そもそも私達が結婚したのが間違っていたのかもしれない。ハロルドは悪い男なのかもしれない。私が彼にそんなふうにしてしまったのかも。
どの考えもぴんとこない。何もかも筋が通らない。すべてが納得できず、どん底まで落ち込んでしまう。
「やり方を変える必要があると思うだけよ」まともな声が出せると感じたとき感じたとき私はいう。そのあとの言葉は涙声になる。
「この結婚生活の基盤がどこにあるのか、考える必要があるんじゃないかしら・・・・・お互いの貸し借りを記録したバランスシート以外に」」
(「ジョイ・ラック・クラブ」 エミィ・タン 小沢瑞穂訳)