「今度こそ本当にわかったと思った。母が言ったことではなく、今までずっと真実だったものが。自分が何のために戦っていたのか、
わかった。ずっとむかし、安全だと思っていた場所に逃げていった怯えた子供 - 私自身のためだったのだ。
目に見えない垣根の奥に隠れた私は、向こう側に何があるのか知っていた。母のサイド・アタック。母の秘密の武器。
私の弱みを探り出す不気味な力。でも、垣根の向こうも覗いた瞬間、そこにあるものの実体がついに把握できた。鎧ではなく中華鍋を、
刀ではなく編み針を持った老女。娘が迎え入れてくれるのをじっと待つあいだに、ちょっとつむじ曲がりになってしまった母が、そこにいた。」
(「ジョイ・ラック・クラブ」 エミィ・タン 小沢瑞穂訳)