2007/06/01

新自由主義とは

新自由主義とは何よりも、強力な私的所有権、自由市場、
自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制約に発揮されることによって人類の富と福利が最も増大する、
と主張する政治経済的実践の理論である。国家の役割は、こうした実践にふさわしい制度的枠組みを創出し維持することである。たとえば国家は、
通貨の品質と信頼性を守らなければならない。また国家は、私的所有権を保護し、市場の適正な動きを、
必要とあらば実力を用いてでも保障するために、軍事的、防衛的、警察的、法的な仕組みや機能をつくりあげなければならない。
さらに市場が存在しない場合には(たとえば、土地、水、教育、医療、社会保障、環境汚染といった領域)、
市場そのものを創出しなければならない-必要とあらば国家の行為によってでも。だが国家はこうした任務以上のことをしてはならない。
市場への国家の介入は、いったん市場が創り出されれば、最低限に保たれなければならない。なぜなら、この理論によれば、
国家は市場の送るシグナル(価格)を事前に予測しうるほどの情報を得ることはできないからであり、また強力な利益集団が、
とりわけ民主主義のもとでは、自分たちの利益のために国家介入を歪め偏向させるのは避けられないからである。


(『新自由主義』 デヴィッド・ハーヴェイ 渡辺治監訳 作品社 P10-11)