2007/06/14

多国籍企業・軍事支援民間企業

2004年3月31日、イラクのファルージャで、四人のアメリカ「民間人」が怒り狂う民衆によって殺害された。
その死体は橋から吊され、残虐ぶりが世界中のメディアによって報道された。アメリカ軍は「民間人」殺害の報復としてファルージャを爆撃し、直後の攻撃だけですくなくとも八百人の市民が殺されている。

イラク戦争でも特記すべきこの事件の元となった四人の「民間人」は、ブラックウォーター・セキュリティ・コンサルタント社に雇用されていた。そのうち二人は、ごく最近にアメリカ陸軍と海兵隊の特殊部隊を除隊したばかりの元兵士だった。

ブラックウォーター・セキュリティ・コンサルタント社は、軍関連の「特殊工作」を主な「営業」領域とする、(その世界では)著名な民間企業である。

また、たとえば日本を母港地とする米第七艦隊所属の潜水艦、コロラドの乗組員263人の半数以上は、米軍籍を有さない「民間人」の技術者や軍事支援民間企業の社員たちである。こういった「戦争の民営化」の実情は、これまで国際法の基礎的想定となっていた、「軍人/戦闘員」と「民間人/非戦闘員」の区別を、以前にも増して困難とさせる。
戦闘が行われている地域におけるカッコなしの民間人たちの安全を保障する、なんらかの国際上の合意が必要なのではないだろうか。

(中略)

多くの民間軍事企業は「国内安全保障」への貢献を広報するのだが、結局のところ多国籍企業の究極の関心は利潤計算表にある。最終的に、これら民間軍事企業は誰の安全を保障するというのだろうか。

(『自由を耐え忍ぶ』 テッサ・モーリス-スズキ 辛島理人訳 岩波書店 P146)

補足:これら民間軍事企業の多くは多国籍企業である。例えば、ワッケンハット社、G4F社(ワッケンハット社と合併)、ACM社(ワッケンハット社の子会社)、ヴィネル・コーポレーション(ノースロップ・グラマン社の子会社)、ヴィクター・ボウト(著名な武器商人)、ブラックウォーター・セキュリティ・コンサルタント社、ダインコープ社、MPRI社、サラディン・セキュリティ社、ケロッグ・ブラウン・ルート(KBR)社、エクゼクティブ・ソリューションズ等々

補足2:ペータ・W・シンガーは2003年に『企業戦士』を出版し、1991年の湾岸戦争で参戦したアメリカ兵の50人に1人から100人に1人は、民間企業からの派遣社員だったと指摘した。
2003年のイラク侵攻に際しては、その割合が10人に1人を超した。