資本主義的な帝国主義は、二つの権力論理、すなわち領土的な論理と資本主義的な論理との弁証法的関係のなかから生まれてくる。
この二つの論理は別々のもので、どちらかに還元することなどできないが、たがいに緊密に結び合わされており、
たがいに内的な関係を形作っていると考えることもできよう。しかしそこから生み出されてくる結果は、空間と時間によって大きく異なる。
どちらの論理も矛盾をはらんでいるが、どちらか一方が作り出した矛盾は他方によって押さえ込まれなくてはならない。
たとえば終わりなき資本蓄積が領土的論理の内部で定期的に危機を醸成するのは、それと並行して政治的・
軍事的な力の蓄積を行う必要があるからである。あるいは領土的論理のなかで政治支配者が変わった場合には、
資本の流れも同様に変わらなくてはならない。国家は自らの記憶と伝統にしたがってその業務を遂行し、独自の統治スタイルを編み出す。
こうして不均衡な地理的発展と地政的闘争、そしてさまざまに異なる帝国主義政治形態の基盤が作り出される。
(『ニュー・インペリアリズム』 デヴィッド・ハーヴェイ 本橋哲也訳 青木書店 P183)