アートという物体はなくてよいし、アート世界はなくてよいし、存在論的に指し示されるアーティストはなくてよい。しかし美的な経験 -
情動と感覚による認知- 、文化の形式のみならずわれわれ世界内存在の社会の形成にたいする批判的判断を含む経験は、なしではいられない。
しかし現在の政治的環境においては、グローバルな公共圏の文化空間はすべて、権力に領有されるものになっており、
文化的コントロールの諸制度によって設定されている以外の存在のありかたが不可能であるとすると、
この潜在力が実現されるチャンスはいちじるしく低い。
(「テロルを考える」 『グローバルな対抗文化?』 スーザン・バック=モース 村山敏勝訳 みすず書房)