2007/02/12

アーレントとスキナーの親和性

「一方で、Q・スキナーも自由主義を評価しながらも、共和主義的概念を蘇らせることを主張する。
もしわれわれが自分たちの自由を確保し、自由の行使を不可能にするような隷属を避けたいと思うなら(これは自由主義の言う消極的自由)、
市民としての徳を陶冶し、共通善のために尽力する必要があると。つまり私的利害よりも上位にある公共善の観念は、
個人が自らの自由を享受するための必要条件であるというのである。言い換えれば、自己増殖への必然的な傾向を常にもつ政治権力は、
これに対していくら制度的、機構的制約を施しても、いつでもこれを突破する危険を内包しており、それゆえに、個人の自由を、
いかなる犠牲を払っても守ろうとする「公民」の自覚的努力なくしては、各人は自らの自由すら守ることはできないということである。「公民」
が私的自由を確保するためにこそ、「公民的徳」(civic virtue)を持ち「公的世界」に参加し、公共への奉仕を果たす
「公民の義務」(civil duty)の遂行の必要性が説かれるのである。ここにもアーレントの思想の親和性が見られる」


(「ハンナ・アーレント入門」 杉浦敏子 藤原出版)


Q・スキナー:クェンティン・スキナー、Quentin Robert Duthie Skinner、1940-、
イギリスの政治学者

「マキアヴェッリ――自由の哲学者」(1981)、「自由主義に先立つ自由」(1998)