2007/02/02

現れの空間

本来世界は人間を含めた生物の複数性に基づく生活領域であり、そこには人間と人間、自然と人間との間に、
相互に主体でありながら客体であり、知覚しながら知覚されるような相互性を基盤とする共生関係が見られる。そして彼女は、「公的領域」
(public sphere)を人々が自らの独自性=人格的アイデンティティーを公的に開示する「現れの空間」(space of
apperance)と理解する。人々が自分が誰であるかを開示しうるのは、
他の人々が見聞きすることのできる具体的な言語行為の中においてであり、この「言葉」と「行為」
によって互いに差異ある存在として生きるという多数性が現実化するのである。言語行為はそれが他者によって理解され、
価値判断されて初めて成立するのであり、自己と世界のリアリティーは世界を共有する人々の相互主観的な承認に依存しているのである。


(「ハンナ・アーレント入門」 杉浦敏子 藤原書店)