2007/02/09

ポートレートの文法

「肖像写真のふつうの文法では、カメラの方を向くことは荘重、率直、モデルの本質の暴露を意味する。正面向きが記念写真
(結婚式や卒業式)にはふさわしいが、選挙の立候補者の広告のために掲示板に貼る写真にはそれほど適さない理由はそのためである。
(政治家の場合は半横向きの眼差しの方がふつうで、それは対決するというよりも舞い上がり、見る人や現在との関係ではなく、
未来とのもっと高遠な抽象的関係を暗示する眼差しである)。アーバスが正面向きのポーズを使うことがそれほど注意を惹くのは、
彼女の被写体が往々にして、そう愛想よく器用にカメラに身を委せるとは思えないような人たちだからである。そういうわけで、
アーバスの写真では正面向きはもっともいきいきした形で、被写体の協力をも意味しているのである。
こういう人たちにポーズをとらせるためには、写真家は彼らの信頼をかちえなければならなかったし、彼らと「友だち」
にならなければならなかった。」


(「写真論」 スーザン・ソンタグ 近藤耕人訳)