2007/02/11

父性権下での女性の位置としての「ファグ・ハグ」という言葉

「もし父権制下における男女関係が男性の同性愛としか帰結しないのであれば、
もし父権制下では男性同士の関係は異性愛を口実とした同性愛関係でしかないならば、このとき女性の位置は、男性同性愛者を愛する<ファグ・
ハグ>あるいは<おこげ>でしかない。


<ファグ・ハグ>は、ある種のクィアな傾向を持つ女性のことではなく、父権制下での男性のホモソーシャル体制において、
すべての女性がひとしく享受させられる場となる。ホモソーシャル関係の管理体制のなかでは、女性はすべて<ファグ・ハグ>なのである。
そしてもし、ここでしばしば使用している「父性権下での」人間関係あるいはホモソーシャル体制が、
あたかも<旧体制>時代のことであるように語れる時代がくるならば-その時代はかぎりなく近いともいえるし、また、
はてしなく遠いとも両方の規定ができるのだが-、そのあかつきには<旧体制>のホモソーシャル体制の典型的な-おそらく悪しき-表象として、
この<ファグ・ハグ>もまた特権的な地位を享受するかもしれない。


(平成8年11月1日発行 第28巻第13号 「ユリイカ」 11月号 「ご主人を拝借」 大橋洋一)