2007/01/26

NATIONAL GEOGRAPHIC 歴史と伝統



「ナショナル ジオグラフィック」誌は、すぐれた写真家に恵まれてきた。世界各地を旅し、砲弾で負傷したり、サメに襲われるなど、命懸けで彼らが撮影してきた写真は、最も偉大なコレクションだと、私たちは思っている。

魔法のような魅力を今も失っていない写真がある。チンパンジーが手を伸ばし、著名な霊長類の研究者ジェーン・グドールの髪にそっと触れた瞬間の写真などはその一例だ。この写真の表紙を飾ったアフガニスタン難民の少女の写真は。
おそらく本誌の歴史の中で、最も多くの人々の感銘を与え、最も多くの投書を集めた作品だ。美しく、悲しみに満ちたこの少女のまなざしは、私たちの魂に訴える。果たして少女は生き延びたのだろうか?

この写真を撮った写真家は何度も彼女を探したが、手がかりはなかった。少女の行方は永遠に分からないかもしれない。

芸術家の魂と、直感的なひらめきをもって、「ナショナル ジオグラフィック」誌の写真家たちは、数々の歴史のドラマを記録してきた。

 大西洋に沈んだ「タイタニック号」の発見、エジプトの砂漠に埋もれた墓の発掘、アンデス山中に眠るインカ帝国のミイラの発見。
さらに写真家たちは皇帝や王の戴冠を目撃し、独裁者の失墜を目のあたりにしてきた。ベルリンの壁の崩壊に酔いしれる人びとの姿を記録し、第二次世界大戦やベトナム戦争、エチオピアの饑餓、コソボ内戦の惨状をひるむことなく見つめてきた。」

(中略)

「さらに、忘れてならないのは、「ナショナル・ジオグラフィック」誌が創刊から8年目の1896年に、果敢な決断を下している点だろう。この年、本誌は世界の人々をありのままの姿で伝え、写真に細工を加えるようなことをしないという方針を打ち出している。本誌のこの方針は数多くのジョークや漫画のネタになったが、その一方で何世代にもわたる若者たちに、新しい世界観をもたらしてきた。1888年の創刊以来の数百万枚もの掲載写真から、最良の作品を撰ぶ作業は、困難きわまりなかった。」

(「ナショナル・ジオグラフィック傑作写真ベスト100」 編集長 William L.Allen アレン)