2007/01/28

母親が娘を愛するというのは

あなたのお父さんを愛していたと、娘に言えるだろうか? 夜はわたしの足をさすってくれた男。わたしの料理を讃めてくれた男。
ふさわしい日が来るまで大切にしまっておいた例の安物の装身具を見せたとき、素直に涙を流した男。彼がわたしに虎の娘を産ませてくれた日、
わたしはそれを彼に見せた。


そんな彼を愛していないなどと、どうして言えるのだろう? だけど、幽霊の愛だった。抱いてはいても、わたしに触れてはいない腕。
ごはんが盛られていても、わたしに食欲がなかった茶碗。飢えもなく、満腹感もなく。


いまは、セントも幽霊になっている。これで、彼とわたしは対等に愛し合える。彼は、わたしがずっと隠していたものを知っている。
今度は、娘にすべてを話さなければならない。彼女が幽霊の娘だということを。彼女には”ジー”がないことを。これが、わたしの最大の恥だ。
娘にわたしの精神を残さずに、どうしてこの世から去っていけるだろう。


そのために、こうしようと考えている。わたしの過去を洗いざらい掘り返して見つめてみよう。すでに起きてしまったことが見えるだろう。
わたしの精神を吹き飛ばしてしまった苦しみが。その苦しみが固くなって輝くまで、もっと明らかになるまで、
この手でしっかりと握りしめていよう。


そうすれば、わたしの猛々しさが-わたしの金色の部分と黒い部分が-取り戻せるだろう。その鋭い苦痛で娘のこわばった膚を貫き、
彼女の虎の精神を自由に解き放ってやろう。二匹の虎の常として、娘はわたしに刃向かうだろう。でも、わたしが勝ち、
彼女にわたしの精神を与えるだろう。母親が娘を愛するというのは、そういうことなんだから。


下で、娘とその夫がしゃべっているのが聞こえる。彼らは意味のない言葉を口にする。生命のない部屋に坐って。