2007/05/11

マリオン・マジッドのアーバス写真に接した時の心理的体験分析

アーバスの写真に接したときの複雑な心理的体験を、マリオン・マジッドは『アーツ』誌で鋭く分析した。


「身近な人間の寝顔を見てその奇妙さに気づいた者なら知っていることだが、これを見て誰しも一種の罪悪感をおぼえずにはいない。
(アーバスの写真を)見て顔をそむけなければ、その人はかかわりをもったのである。小人や女芸人の視線をとらえたとき、
写真と見る者とのあいだに和解が成立する。あえて見たことによって、一種の浄化作用が働き、われわれはうしろめたい切迫感を解消する。
いわば写真がわれわれに見ることを許すのである。つまるところ、ダイアン・アーバスの芸術の偉大な人間性は、一見、
彼女が侵害したように見えるプライバシーを浄化しているところにあるのだ」


(「炎のごとく 写真家ダイアン・アーバス」 パトリシア・ボズワーズ 名谷一郎訳 文藝春秋 P430-P431)