2010/02/27

バザン「写真画像の存在論」を一言で言えば

バザンの写真論的な意義は、基本的には「写真画像の存在論」に集約されていると言えるだろう。この短い論考は、写真のメディウム的な特性と写真の受容経験との密接な関係を論じるものであり、その意味で写真の根本的な問題を扱うものである。この論考は実際、直接的・間接的に、現代の多くの写真論の基礎となってきた。バザンの主張を一言で言えば、写真は人間の創造的干渉がない画像であり、その人間的なものを一切含まない機械的な再現画像であることに、またその機械的な形成過程を経ることで生じる客観性に、写真画像固有のリアリズムがある、ということになるだろう。

『青弓社「写真空間」No.3 第三章 「アンドレ・バザンからケンドール・ウォルトンへ 写真的リアリズムの系譜」内野博子』