2007/02/12

アーレントの「評議会制度」

「ここまでアーレントの共和主義の内実を検討してきたが、では彼女は具体的にどのような政治制度を構想していたのだろうか。彼女は、
アメリカ革命の革命精神を制度化するようなものとして、ジェファーソンの主張する「ウォード」(ward)
という小規模な共和国が政治の基本単位となり、それがピラミッド型に積み重なるような政治体制を構想した。この延長線上に有名な
「評議会制度」(council-system)がある。フランス革命時の「革命協会」、1871年のパリ・コミューン、1905年、
1917年のロシア革命におけるソヴィエト、1918-19年のドイツ革命におけるレーテ、
1965年のハンガリー動乱における評議会などが歴史上有名である。彼女は政党制や代議制を批判する。
政党制や議会制は代表によって成立する。しかし、「利害や福祉」は代表できるが「活動や意見」は代表できないのである。評議会制度とは、
政党制や代議制に代わるものであり、その特徴はその成立における自発性にあり、そこは市民が意見を戦わせる自由で公的な空間であった。
この評議会制度は連邦制の原理とも結びつく。」


(「ハンナ・アーレント入門」 杉浦敏子 藤原出版)