2007/02/08

アーバスとスタイケンの写真展

「アーバスの写真は反ヒューマニズムのメッセージを伝えており、1970年代の善意の人びとは進んでそれに心を痛めたが、
それはちょうど、1950年代には感傷的なヒューマニズムによって慰められ、気を紛らわされるを願ったのと同じである。
これらのメッセージは想像されるほどの違いはない。スタイケン展は上昇であり、アーバス展は下降であったのだ。
しかしどちらの経験も現実の歴史的な理解を排除するためには等しく役立っている。


スタイケンの写真の選択はあらゆるひとが共有する人間の条件や人間の本性の様相を帯びている。

個人はあらゆる場所で同じように生まれ、働き、笑い、そして死ぬのだということを示そうともくろんで、「人間の家族」は歴史-
歴史に根差した真の差別、不正、対立-が決定づける重味を否定する。アーバスの写真では、だれもがのけ者で、どうしようもなく孤立しており、
機械的で片輪であることの実体と結びつきのなかに不動化しているような世界を暗示することによって、
同じくきっぱりと政治の値打ちを下げている。スタイケンの写真選集の敬虔な持ち上げと、アーバス回顧展の冷えびえとした失意とは、
ともに歴史と政治を無縁のものにしている。一方は人間の条件を歓喜へと普遍化することによって、他方はそれを恐怖へと粉砕することによって。


(「写真論」 スーザン・ソンタグ 近藤耕人訳 晶文社)